数学の楽しいところ

私の専門は数学です。
大学院まで行って、出来るものなら数学者になろうとしました。
その目標はいろいろな理由で叶いませんでしたが、今でも数学の勉強は続けています。
専門書も読みますが、軽い数学関連の読み物(そういう本・雑誌があるんです)を読むのも好きです。

多くの人にとっては、数学なんぞにそこまで入れ込む理由がわからないな、というところなのでしょうか。

なにが数学の魅力なのか?
それを少しでも伝えられたらと思います。

さて、数学が好きだよ、好きとまでは言えないけど別に嫌いじゃないよ、という人を知った場合。
おそらくですが、多くの方は「この人は数学の問題を解くのが好きなんだ」と判断するのではないでしょうか。
だって、ほとんどの方にとって、数学というのは問題を解くものですからね。
実はですね、その感覚、間違っているとまでは言いませんが、数学好きのごく一面しか捉えられていないのです。
いやいや、他にどんな面があるっていうんだい、と問い正したくなるのがこれまた多くの方の感覚でしょう。

まず、多少は共感が得られそうなのは「問題を作る」こと。
数学の問題で、たまーに、他とは少し違う独特な解き方をするとうまく速く解けてしまう、というものがあります。
そういう問題は「良問」と呼ばれて、長くいろいろな参考書に載り続けることになります。
そんな良問を、自分でも作れたらなぁ、という思い。
この気持ちは、聞いてすぐにパッとはわからないけど、少し考えたら分かりそうな、でも分からない人もいる、ぐらいのクイズを出されたあとの気持ち、と言ったらいかがでしょう、お分かりいただけるでしょうか。
クイズの例としては・・・難易度設定が難しいくていい例になっているかはわかりませんが「長野県、長崎県のほかに、『なが』のつく県はどこでしょう?」とか。
答えはすぐには書きませんけど、このクイズをまだ知らない人にとっては先ほど言ったような、ちょうどいい手応えかと思うわけです。もちろん人によるので、ちょうどいいと思えなかったらごめんなさい、ですが。
そしてこのクイズの答えまで知ったあとどうしたくなるか、と言えば、他の人にクイズだよ、って出題したくなりますよね?
数学でも、そんなことがあるんですよ。
私は大していい問題を作れたことはなくて、残念ながら今スッと出題できるようなオリジナル問題ってものは持っていないんですけどね。

次は、共感できる方が少し減ってしまうかもしれませんが「難しいからこそ、理解したい」という側面。
いくら数学が得意だ、計算も速いよ、という人でも、やはり数学を勉強していて難しいと感じることはあるものです。難しいというか、なぜかがわからないというか。
難しくて解けない問題、ということではないんですよね。
小学校の算数で例えると、時計の読み方がわからない、とか、分数の意味がわからない、とか。
そんなとき、教科書・参考書の解説を読んだり、先生にしつこく聞いたりして、ようやく意味を理解する。「ああ、そうゆうことか!だからあれはああなったんだ!」みたいなスッキリ感。
数学の本格的な勉強を始めると、これの連続です。大抵、そもそもの定義の段階で「なぜそんな定義をするんだ?」と感じるんですよ。
でもその定義に基づいて証明される定理を理解すると「なるほど、これがやりたかったのか!」とわかる。
具体例がないと伝わりにくいだろうとは思いますが・・・
思いつく例が専門的なものになってしまうので、どっちにしろ伝わらない気がするのです。この点は現在の私の考察不足なので、いい例を思い付き次第、更新します。

最後の、そして数学という学問そのものであって、数学者というのはこれをやる人のことなんです、と言っていいだろうという面が、いよいよ専門的になりますが「数学的対象の性質を知る、探求する」ことです。

数学的対象というのは、数とか図形のこと。
きっと多くの人が、数や図形なんて、そんなに探求するような性質なんてなくない?と考えるのではないでしょうか。
私自身、高校生までそう思っていましたし。
だって、そんなに複雑なものではないですからね、数とか図形なんて。性質って言ったって「平行四辺形の2本の対角線は中点で交わる」とか、まあ、正直大した話じゃない。
だから、数学の勉強をする、といったら、より複雑で難しい計算をする、ということなんだろうと思っていました。

でも、ちがう。そうじゃないんです。
たかが整数といっても、面白い性質があるものです。
例えば「4以上の偶数は2つの素数の和で表すことができる」
6=3+3,8=3+5,10=3+7,なんて具合ですね。※ちなみに素数ってのは「1とその数自身でしか割り切れない自然数」※
これ、「ゴールドバッハの予想」と呼ばれています。まだ証明されていなくて、定理ではないのです。
wikipediaによると、2022年11月現在、4×10^18(4百京)までは確かめられているそうで。
そこまでわかっていたら十分定理でしょう、と言いたくもなりますね。
とはいえ、偶数自体無限にあるわけですから、こんなに大きいところまでわかっていても、それはまだ大海の一滴に過ぎないのだ、とも言えます。
なぜ、そうなるのか?本当にゴールドバッハ予想は成り立つのか?
どうすれば証明できるのか、あるいは成り立たない反例を見つけられるのか。
なかなか浪漫がありますよね。

そして、数学の世界にはこんな浪漫がまだまだたくさんあるんです。勉強すればするほど、さらに面白いものが出てくる。
こうして知るだけでも十分面白いと思いますが、この予想の証明に自分の手で関わることが出来たら、激アツです。

数学が好きで、普段数学の本を読む、なんて人は、こんなことを感じながら生きているのでした。まあ、少なくとも私は、ですね。

ところで、クイズの正解は「かながわけん」でした。