数学の勉強 その1 計算力

だいぶ前に「数学の奥義」という記事を書きました。

数学の問題に対する取り組み方は、その記事に書いた通り「わかりやすい具体例を考える」ことで、それ以上特に付け加えることはありません。

もちろん、個々の問題に対してはそれぞれにポイントがあるわけですが、数学全体に通じ、かつ誰もが実践しやすい方法としてはおそらく最高のものでしょう。

さて、実際に奥義を活用したとして。生徒からも「具体例を考えてみたらちゃんとできた!」という言葉をいただくことがもちろんあります。
しかし、すぐに数学のテストの点数に結び付くかと言えば、そう簡単な話でもない。
計算には時間がかかっちゃうし、途中で間違いもする。
結局、やり方がわかったとしても、思ったほど点数に反映されないことも多いわけです。
それでは、数学のテストで実際に点をとるためには、どのように勉強をすればいいのか?

まず鍛えるべきなのは計算スピードですね。
当然のことですが、計算に時間がかかるとこなせる問題数が少なくなりますし、間違いに気付いても直したくなくなります。
また、どうせ間違ってしまうだろうな・・・という、恐怖心あるいは諦観が先だってそもそも計算を始められないこともあります。

ということで、高校受験・大学受験を目標として計算スピードを上げることを考えていきます。

第1段階は、分数の足し算・引き算の練習がいいだろうと思います。余裕で出来る場合は別にとばしていいです。

例えば、4分の3 引く 6分の1 という計算を考えてみましょう。
分母が同じなら簡単ですが、この問題のように違う場合は、まずその分母を揃える、いわゆる通分をするところからはじめます。
通分のためには、分母の公倍数、できれば最小公倍数を見つけます。
一つの方法は、分母それぞれの倍数を並べていくこと。4,8,12,16・・・、6,12,18,・・・あ、12が両方の倍数だな、と見つかります。
次に分母を12にするために、それぞれ何倍するのかを確認。倍数を探す時に気にかけていられると早いですが。4は3倍、6は2倍ですね。
で、これを分母・分子にかける。分数って、分母・分子に同じ数をかけたり、同じ数で割ったりしても、見た目が違うだけで同じ数なんです。理論上、少し難しいところではありますが・・・
これで問題は 12分の9 引く 12分の2 になります。
分母が揃ったらあとは分子だけ計算して、答えは 12分の7 です。約分はできないので、これで終わり。
※ちなみに、なぜ分子だけ計算するのかというと、分子は 分母 分の1 という分数が何個あるかを書くことにしているからです。
つまり、12分の9、12分の2 はそれぞれ 12分の1 が9個、2個あることを表していて、個数を考える限り、引けば残るのは 12分の1 が7個なはず、つまり12分の7というわけです。※

以上が分数の足し算・引き算の計算です。
これを素早くやりたかったら、まず通分のために、分母の公倍数が何か、出来るだけ早く見つけられるといいですね。

先ほど紹介したやり方で探すなら、かけ算の速さがポイントです。
ここでまずチェックすべきなのは「九九を暗記しているか?」です。
案外、九九があいまいなままの人っています。
あいまいでも、順番に足していけばわかるから、別にいいんですよね。
あるいは、覚えやすいところだけ覚えて、そこから足したり引いたりする人もいるかと思います。
例えば 4×7 を覚えていない。でも4×5=20、4×2=8 は知っている。なら4×7=28だな、という感じです。
これは計算スピードという点では、正確に丸暗記している場合と比べるとどうしても遅くなりますよね。
ということで、部分的にでも九九を足したり引いたりでやっている自覚があるなら、ぜひ九九の丸暗記をしてみることをお勧めします。
※ところで逆に、暗記はしてるけど理屈は知らん、という場合は絶対に理屈を理解するべきです。
理由は、あってるかな?と気になったとき、すぐ確かめられるから。
たとえ暗記している場合でも、ときにふと「あれ、3×6=18だよね?」と思うことはあります。
そんなときにきちんと理屈(=順番に足せばいい)が分かっていれば、すぐ確かめられます。
3×3=9は間違いないから、9+9=18だな、やっぱりあってるわ、みたくね。
これは九九に限らず、数学の学習において、もっとも重要なことの一つです。※

また、公倍数を見つける計算方法、というのもあります。
その具体的なやり方を2つの整数の場合で手順だけ言いますと

1.最大公約数を見つける
2.一方を最大公約数で割る
3.割ったときの商をもう一方にかける
 
となります。

例として、先ほどと同じ4と6でやってみます。1.最大公約数は2です。2.4の方を2で割ります。商は2。3.もう一方、つまり6に2をかけると12。こんな風に、倍数のリストを作るのと同じように最小公倍数を求めることができます。(6を2で割ったときは商が3、4×3で12です)

ここであまり学校では教わらないだろうワザを一つお伝えしましょう。
それは2つの整数の差を求めるというもの。
実は、2数の差は、最大公約数そのではないかもしれませんが、かならず最大公約数の倍数にはなるのです。
だから、差を求めて、それが2つの整数の約数か考える。約数であった場合、最大公約数であることは確定です。
約数でないようなら、その差の約数を考える。(あるいはもう一度、小さい方との差をとってもいいです)。
これはユークリッドの互除法と呼ばれる方法のエッセンスを利用したやり方で、高校入試くらいまでの分数の計算なら十分使えるでしょう。
※というか、大学入試で4桁か5桁の整数に関する問題がでて、最大公約数が必要だなぁ、ってなときでも、互除法をやるまでもなく、引いていくだけでも割と間に合いますけどね。
不定方程式の解を求めるときでも、互除法を使わない方法があって、そちらの方が楽です。※

もう一つおまけで、素因数分解を利用することでも、最大公約数、最小公倍数を求めることができます。

どの方法でやるにしても、最大公約数、最小公倍数が手早くわかる、というのは分数の計算をする上では大変重要です。
十分に練習して、ある程度まで覚えてしまっている状態が好ましいでしょう。
ただ、整数が無限にある以上、2つの整数の組も当然無限なわけで、どこまで覚えたらいいかということはお伝え出来ません。

覚えられる限り、覚えたらいい。

計算すれば求められるのだから絶対必須、とは全然言いませんが、覚えられるものなら覚えてもいい。
先ほどの九九の例と同じことで、正確に覚えていたらその分計算が速くなります。
というか、上で太字で書いたフレーズ”覚えられる限り、覚えたらいい”これは案外、数学の真理でもあるかもしれません。
ただし、理屈を分かったうえで。これはふと不安になったとき、確かめるため。
いくら暗記していても、いつも「あれ、あってるかな?」と気になってしまうようだと、計算を進める気がしなくなります。
もし間違っていたら、そのあとの計算が無意味になりますからね。

さて、通分ができたら、分子の足し引きをするだけです。
だけ、とは言いますが、実は足し引きは単純に計算を間違えやすいです。
繰り上がり、繰り下がりがあるせいでしょうね。
実のところ、全ての数学を通して考えてみても、作業としては繰り下がりが一番難しいかもしれません。
当然ながら、理屈について言えばもっと難しいものなんていくらでもありますよ。
積分とかね。
でも、理屈は置いといてどういう計算をするの、というのなら、積分と言ったって指数を増やしたり、sinをcosにしたり、と結構単純ですから。
それに比べると、繰り下がりは大変ですよね。
これも、あまりにもよく間違う場合は暗記してしまうのも手です。
実際、引き算のとき指で計算している方も案外いるもので。
別に何も問題はないですが、暗記してしまえば速い、というのは九九と一緒です。
学校ではあまり暗記しろとは言われませんが、1桁+1桁、繰り下がりのある「10いくつ-1桁(13-7とか)」に関しては覚えてしまうのも悪くないでしょう。

以上、まず計算トレーニングの第1段階としては分数の足し算・引き算から。
通分、約分で公倍数、公約数の感覚を磨き、分子の足し引きで繰り上がり・繰り下がりを正確にできるようにする。
倍数、約数の計算ではかけ算割り算もしますから、総合的に計算のトレーニングになります。
小5の計算ドリルを使いましょう。中学生以上なら帯分数の足し引きはやらなくてもいいです。
最終的には、1桁+1桁、10いくつ-1桁、九九は暗記してしまうこと。
長くなってますので、第1段階はここまでにしましょう。
続きも近いうちに書こうと思います。